| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-046 (Poster presentation)
はじめに:ツル植物は他の構造物に自重の支持を委ねる寄生的な生活史を持つ。この生活史では,光などの資源有効性に加え,登攀対象の状態を決める宿主植生構造が重要な役割を果たすと考えられる。そこで本研究では,同所的に分布する複数の木本ツルについて,初期登攀と宿主植生構造の関係を定量し,ツル植物による宿主選択の可能性について検証を行った。
材料及び方法:クズ,フジ,スイカズラ,ツルウメモドキを調査対象とした。木本ツル及び宿主植生の構造の評価では,Point Intercept法によって抽出した計測対象を,対象木本ツル,被登攀植物,対象以外のツル植物に区分し,種名及び植物密度を,対象木本ツルではさらにシュートの登攀状況を記録した。解析では種間の差異,パラメータ間の相関を検定した。
結果及び考察:クズ,フジともに初期登攀から植物密度が高いが,フジは自立した非巻き付きシュートが多く取り付き方が異なった。一方,ツルウメモドキはほとんど地這せずに取り付き,葉や茎は茂っていなかった。被登攀植物群の構造では,ツルウメモドキが取り付く植物群の密度が高く,クズでは密度が低かった。また垂直方向に沿う茂り方の偏りはフジの被登攀植物群で大きかった。共出現する他のツル植物の構成は,フジが取り付く際に密度,種数共に多いのに対して,クズの場合では少なかった。木本ツルと他の構成要素間の相関では,フジ,クズ,スイカズラが他の構成要素の配置や密度に影響されたが,ツルウメモドキは影響されなかった。また,フジは他のツル植物との相乗効果により,クズは疎な登攀対象での空間占有により自ら藪を作り出すと考えられた。以上より,解析した木本ツルの登攀は,登攀対象の構造に対応しており,宿主の選択性に差異があることが示唆された。