| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-053 (Poster presentation)

ブナ実生の生残および生長と周辺成木との血縁度の関係

*赤路康朗(岡大院・環境生命), 宮崎祐子(岡大院・環境生命), 廣部 宗(岡大院・環境生命), 坂本圭児(岡大院・環境生命)

成木の周辺では種特異的な天敵(病原菌や食害虫等)の存在によって、同種実生の生残率は低くなることが知られている。また、病原菌の感染率は宿主の遺伝型に依存するとの報告もあり、個々の成木にそれぞれ適合した病原菌が存在している可能性がある。そのため、本研究では実生と周辺成木の血縁度が増加すると実生の生残率と成長量は減少するという仮説をたて、野外のブナ実生個体群を対象に検証した。2012年に0.25ha調査区を若杉ブナ天然林(岡山県)に設置し、調査区内に存在した2年生と6年生のブナ実生の存在位置、主軸長、および葉数を記録し、2013年秋にそれらの個体の生死を追跡した。採取した葉からDNAを抽出し、6つのマイクロサテライト遺伝子座を対象に遺伝解析を行った。実生と周辺成木の血縁度は、実生から半径20m以内に含まれるブナ林冠木を対象とし、逆距離加重法を用いて算出した。実生と周辺成木の血縁度と同種成木までの最近距離を共変量とし、残差の空間自己相関を考慮した統計モデルを構築して解析した。その結果、血縁度と最近距離は実生の生残率に対して有意な影響を与えていなかったが、血縁度は2年生の実生には負の影響を、6年生の実生には正の影響を有していた。一方、血縁度は6年生の実生に対してのみ主軸長と葉数に有意な正の影響を与えていた。最近距離は両齢集団の主軸長と葉数に正の影響を与えており、2年生の実生の葉数に対しては有意な正の影響が検出された。以上の結果から、実生と周辺成木の血縁度は正と負の両方の影響を有し、発芽定着後の経過年数に伴って血縁度が実生の生残や成長におよぼす影響の方向が変化する可能性が示唆された。


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