| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-056 (Poster presentation)

関東山地におけるスズダケの一斉開花

森広信子,多摩森林科学園

2014年6月、関東山地の奥秩父地域でスズダケが一斉開花した。開花の範囲は飛竜山から金峰山に及び、開花した桿は全ての新枝が花茎になり、新葉を全く出さなかった。これに先立ち、1990年代半ば頃から奥多摩・秩父地域でニホンジカによりスズダケの葉が広範囲に食べられて枯死する地域が広がっており、重度の食害の後で少数の花茎が出るケースが散見されていたが、一斉開花はそのような部分開花とは全く異なっていた。また食害でほとんど葉を失った桿でも、生きていれば花茎のみを出していた。一方、開花しない桿は新葉を展開した。

2015年、同じ地域でスズダケの開花が続き、2014年に開花しなかった集団が開花した。そこで登山道を歩いて2014年に開花した部分と2015年に開花した部分、および開花しなかった部分を、登山道に沿って区別して記録し直した。2014年に開花した桿には、花茎の痕が残っているので、それ以前に食害で枯れたものとは区別できる。結果は、登山道を観察線として長さで表すと、2014年開花部分が21.6km、2015年開花部分が12.3km、この2年間に開花しなかった部分が4.3kmであり、2014年に全体の約56.5%、2015年に約32.3%が開花、約11.2%は開花しなかった。

さらに、奥秩父主稜線より北側では2014年に開花した集団が多かったが、南側の笠取山から大菩薩嶺にかけては、2015年に開花した集団が多く、地域による差があるように見えた。


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