| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-059 (Poster presentation)
ススキはAlが植物毒性を示す酸性土壌においても優占することが知られている。調査地のススキの元素分析を行ったところ根に約2,000 mg/kg DWと高濃度のAlを蓄積しており、Al耐性を有すると考えられた。これまでの結果では、高いsiderophore産生能を示す根内生菌Chaetomium cupreumをススキ滅菌実生に接種したところ接種区では非接種区の実生よりも生長が促進されたため、C. cupreumの接種によりススキ実生のAl耐性が増強されたと考えられた。本研究ではススキの根におけるC. cupreumの菌糸およびAlの局在を解明すると共にC. cupreumの産生するAl解毒物質を明らかにすることで、内生菌の関与したススキのAl耐性機構を解明することを目的とした。
ススキの水耕試験にはAlの終濃度が100 µMになるように調整した1/10 Hoagland培養液を用い、C. cupreumの接種/非接種区を設定した。培養後、ルモガリオン染色により根におけるAlの局在を観察したところ、C. cupreum接種区では非接種区と比較してススキの表皮および中心柱にAlを局在させることが確認された。また根表面の菌糸内にもAlの局在が確認されたことから、C. cupreumの感染によってススキ実生根内部においてAlの局在が生じ、C. cupreum自身もその菌糸の中にAlを蓄積することで、ススキのAl耐性を高めると考えられた。またC. cupreumの産生するAl解毒物質の単離・精製を行い、ESI/HRMSにより精密質量を分析したところ、m/z:305.0295、分子式C14H9O8(計算値305.0297)と推定された。現在NMRを用いて分子構造を解析中である。