| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-060 (Poster presentation)

斜面雪圧の評価と落葉樹(ブナ)・常緑樹(スギ)への影響の比較

*宮下彩奈(東大・院理・日光植物園), 勝島 隆史(森林総研・気象環境研究領域), 舘野正樹(東大・院理・日光植物園)

多雪地の森林では、雪が木本の種分布の大きな決定要因になっていると考えられるが、そのメカニズムにはまだ不明な点が多い。そこで次の課題を通して、高木種の成育が可能な積雪環境や生育に有利な特性を明らかにしたい。

1)斜面雪圧の実態解明

斜面上の構造物にかかる雪圧には、地形的な効果(斜面傾斜や尾根・谷など)が重要であると考えられるが、天然林での雪圧の測定例はほとんどなくその効果は不明である。また、現状では地形に応じた雪圧の推定も困難である。そこで、同一斜面中での雪による力の、地形による大きさや季節変化の違いを明らかにする。天然林中の高圧線鉄塔下の立木刈払い斜面において10地点に金属パイプを設置し、ひずみを30分間隔で記録中である。また、パイプの物性値や現場での積雪深・密度の調査から、実際の雪圧の推定を行う。

2)積雪期の幹ストレスの比較

ブナなど特定の種は積雪環境に強いと考えられているが、なぜ・どのくらいの環境に耐えられるのかは不明である。そこで、天然林中で同所的に生育するブナとスギについて、積雪期の幹ストレスの大きさやパターンを比較する。傾斜や方角の異なる3ヵ所の斜面において、直径3-50㎝の計24個体の根元部分のひずみを測定中である。

これまでの結果では、斜面でのひずみは遷急線の上部より下部で最大6倍程大きく、また谷部では尾根部の最大3倍程大きいこと、ひずみパターンは積雪深に連動するというよりはある時を境に直線的に増大する(グライド発生時?)という特徴がみられた。ブナとスギの測定では、現時点で顕著なひずみが見られたのは7cm以下のスギ個体のみだった。いずれの測定でも、斜面傾斜角とひずみの相関は不明瞭であり、尾根/谷や斜面上での位置が重要である可能性が示唆された。


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