| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-062 (Poster presentation)

台風撹乱後の北方林生態系で見られた光合成機能応答

*戸田求,王新(広島大・院),中村誠宏,福澤加里部,吉田俊也(北大・FSC)

近年の気候変化に伴い極端気象現象の増加が報告されている。極端現象の種類、頻度や強度は地域ごとに、またイベントごとに異なるが、総じて森林生態系の物質循環に影響を及ぼしている。北海道北部に位置するダケカンバを優占樹種とする森林域に50年に一度とされる大型台風が襲来したのは2004年であったが、その際に対象森林でみられた正味生態系交換量の特徴的変化について、未だに解明されていない点が残されている。その特徴的変化とは、台風害後の生態系交換量と葉群構造や機能の変化の間で連動しない回復プロセスがみられた点である。そこで、申請者らは同じ地域に生育するダケカンバ林を対象に同程度の風害を模倣し、個葉レベルの光合成や生態系の物質循環過程に着目した野外撹乱実験を行ってきた。具体的には実験区に撹乱区と対照区を設け、撹乱区では着葉時期に葉の剥取りをし、その前後で両実験区での光合成機能や土壌炭素および窒素循環の時間推移、さらに葉の形質や化学的防御機構についての調査比較をした。その結果、光合成機能の変化については、撹乱区で葉の強制採取2年後に、光—光合成の関係が対照区と比べて有意な違いを示し、最大光合成速度の最大値が記録された。一方で、撹乱後から3年目での最大光合成速度は最大値は2年目と比べて小さくなり、対照区とも同程度の傾向になった。このことから、この段階まで葉群構造の回復は未だ途上段階にあるものの、樹木の機能には数年間に劇的な変化がみられ、生態系レベルの生態系炭素交換量に大きな役割を果たしていることが示唆される。本発表では、この変化傾向の要因について、他の調査データの結果と併せて考察する。


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