| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-063 (Poster presentation)
陸上高等植物は生長のために二酸化炭素を取り込みたいが、水は逃したくない。光を効率よく受け取り、二酸化炭素を効率よく吸収するために、葉を薄く広げる。葉における二酸化炭素の吸収口は気孔であり、葉に無数に開いている開閉可能な穴である。植物は二酸化炭素が必要なときに吸収を可能にしつつ、できるだけ水蒸気を逃さないよう気孔の開閉を調節している。それでは、気孔を介することで、二酸化炭素の吸収はどの程度阻害されているのか。また、水蒸気の流出はどの程度抑制できているのか。このような疑問を解決するため、ツユクサを用い、無傷葉のガス交換速度と、剥皮した葉のガス交換速度を比較した。また、剥皮による葉のダメージを調べるため、コンダクタンスの影響を無視できる高い二酸化炭素濃度で光合成速度を測定し、比較した。大気濃度での光合成速度は表剥皮前後で6.5%上昇し、裏剥皮前後で0.1%低下した。蒸散速度はそれぞれ153%、81%上昇した。高二酸化炭素下の測定では、光合成速度はそれぞれ0.7%、12.4%低下した。このため、高二酸化炭素下の光合成速度の低下を葉のダメージによるものとすると、剥皮による光合成速度の上昇は表剥皮で7.2%、裏剥皮で14%となった。気孔を介さない光合成速度の上昇は僅かであり、気孔を介しても十分に二酸化炭素を葉内に取り込んでいることが示された。また、風速によっては、水蒸気の流出が半分以下まで抑制されており、気孔を介することのメリットが示された。