| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-066 (Poster presentation)
植物は生育環境の変化やシンク器官とソース器官のバランスの変化に応じて、シンク活性(各器官への光合成産物の物質分配)やソース活性(光合成速度)を巧みに調節している。例えば、植物が長期間の高CO2環境や急激なN不足を経験すると、各器官のシンク活性の低下とともに光合成速度の低下が観察される。このような光合成のダウンレギュレーションはシンク活性に対してソース活性が過剰な場合に起こると考えられている。発表者のこれまでの研究から、光合成速度のダウンレギュレーションの背景に、少なくとも2つのメカニズムが存在することが示唆された。インゲンでは光合成タンパク質であるルビスコの量や活性化率を減少させるという生化学的な調節を、ダイズでは光合成産物を細胞壁などに投資することで基質であるCO2の透過性を減少させるという物理的な調節をしている可能性がある。
そこで本研究では、ダイズとインゲンのシンク-ソース比を、N条件や摘葉・遮光処理によって様々に変化させたときの、生理学特性 (光合成速度、ルビスコ量・活性化率、葉肉コンダクタンス) および形態学的特性 (葉の内部構造、細胞壁量・厚さ、非構造性炭水化物量) を解析することで、メカニズムの詳細な解析を行った。
ダイズでは摘葉処理に応じて、ルビスコ量や最大炭酸同化速度は増加したが、細胞壁量が増加し、炭素安定同位体分別の低下に伴い葉肉コンダクタンスも低下していた。一方インゲンでは細胞壁量や葉肉コンダクタンスに大きな変化はなかったが、遮光処理に伴いルビスコ活性化率の変化が見られた。これらの結果から、植物種によってシンク-ソースバランスの変化に応じた光合成の調節機構に、多様なメカニズムが存在するという仮説が支持された。