| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-083 (Poster presentation)
樹木の形態的な機能の重要なものとして、光合成生産効率の最大化とダメージリスクの最小化が挙げられる。光合成生産に関しては葉の量を増やし効果的な配置をとることが重要だが、これは力学的支持に要求される枝への資源投資量も増加させる可能性があり、葉への資源投資に対する負の効果をもたらしうる。本研究では樹木シュートの3次元構造における光合成生産効率と力学的支持との間の妥協点を明らかにすることを目的とし、シュート構造と各部に生じる力の関係の可視化のため、シュートの3次元光合成モデルであるY-plantを基礎とした応力計算プログラムを作成した。これを岐阜大学高山試験地に自生するミズナラ(日向・日陰)・ダケカンバ・ノリウツギ・オオカメノキ成木の末端シュート(構成枝φ < 6 mm)の形態データに適用し、各枝セグメント(枝の節と節の間を一つのセグメントとする)において自重がもたらす曲げ応力について以下の傾向を得た。
垂直に近い枝セグメントでは自重による曲げ応力は水平に近い枝セグメントよりも全体的に小さく、水平に近い枝セグメントでは曲げ応力と直径の間に正の相関が見られた。よって、垂直に近い枝の方が自重のストレスは少ないといえる。しかし、ミズナラでは垂直に近い枝を多く含む日向のシュートは水平に近い日陰のシュートよりも枝が太い傾向にあり、枝形態形成における自重以外の環境要因の影響が暗示された。
本講演では以上の結果に加え、この傾向を基に仮想空間に自由に構築したシュート形態に関して力学的な特性を考慮して得られた枝葉重量およびY-plantによる光合成生産量の計算結果を照らし合わせ、「力学的安全性を保ちつつ枝への投資を抑え、なおかつ光合成効率の良い葉の配置を実現するシュート形態」について議論する。