| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-085 (Poster presentation)

Whole-tree pressure-volume法によるスギの樹体内貯留水の測定

姫野早和,玉泉幸一郎(九大・農),*東若菜(神戸大・農)

貯留水は樹木の水分通導において重要な役割を担う。本研究では樹体全体を用いて作成したWhole-tree pressure-volume(WT-P-V)曲線から樹体内貯留量を求めることを目的とした。また、WT-P-V曲線とシュートを用いて作成したP-V曲線の両者の水分特性値を比較した。

10年生スギ3本を供試し、2015年8月14日に断幹した後1日吸水させた。翌日供試木を倒した後、暗黒下で自然乾燥させながら供試木全体の重量変化とシュートの木部圧ポテンシャルを測定しWT-P-V曲線を得た。また、同時に幹に装着したデンドロメーターで幹の収縮量を測定し幹における貯留量を得た。シュートのP-V曲線は倒した直後に供試木樹冠からシュートを採取して作成した。全ての実験の終了後、供試木を幹、枝、葉に分けて乾重量を測定した。

WT-P-V曲線から得られた樹体内貯留量は樹体の乾重量1kgあたり、0-1.0MPaの範囲で204mL、0-1.5MPaの範囲で379mLだった。これに対し幹の貯留量は0-1.0MPaの範囲で26mL、0-1.5MPaの範囲で41mLであり、全貯留量に対し10%程度であった。一方で、シュートのP-V曲線から得られた葉の貯留量は針葉の乾重量1kgに対し、0-1.0MPaの範囲で平均281mL、0-1.5MPaの範囲で377mLであり、全貯留量と比較して同等か、わずかに大きかった。これら二つの結果は全貯留量に対し幹の貯留量の割合が小さいことを支持した。

水分特性値をシュートのP-V曲線と比較した結果、WT-P-V曲線では飽水時の浸透ポテンシャル、膨圧を失う時の相対含水率、葉の水ポテンシャルが高く、体積弾性率が大きかった。WT-P-V曲線で得られた値が全生細胞の平均値とすると、これらはシュート以外の生細胞の水分特性による結果であると推測された。


日本生態学会