| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-094 (Poster presentation)
半乾燥地では気温の日較差が大きいため,夜間から早朝にかけて土壌や葉の表面に大量の露が発生する.利用可能な水が限られている乾燥地植物にとって葉面上の露が貴重な吸水源である可能性が高い.そこで本研究では,乾燥地植物の葉による夜露の吸収メカニズムを解明するため,岡山大学農学部圃場に生育する中国半乾燥地原産のJuniperus sabina L.の生枝と切枝から鱗片葉を採取して水を与え,その前後の重量変化から吸水量を推定する吸水実験を行った.実験に用いる葉の水ポテンシャルと気孔開度を変化させ,葉内外の水のポテンシャル勾配と気孔開閉が吸水量に及ぼす影響について調べた.さらに,霧吹きで葉に噴霧する方法と葉全体を沈水させる方法の2つの方法で吸水させ,葉表面に保持される水の量や水に接する葉面積が吸水量に影響するのかを調べた.その結果,葉の水ポテンシャルが低い葉ほど,つまり葉内外の水ポテンシャル勾配が大きい葉ほど吸水量が増加した.また,葉の水ポテンシャルと吸水量の関係は気孔開閉の影響を受けなかった.これらのことから,J. sabinaの鱗片葉は気孔以外の経路から葉内外の水ポテンシャル勾配に依存した吸水を行うことがわかった.また,葉に噴霧した場合と葉全体を沈水させた場合では,葉表面に保持される水の量には有意差がなかったが,吸水量は後者の方が多かったことから,葉からの吸水量には水に接する葉面積が影響することが示唆された.以上より,J. sabinaは夜明け前の葉の水ポテンシャルが低くなるような乾燥条件下では,気孔が閉じていても葉から夜露を吸収しうることが示唆された.