| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-100 (Poster presentation)
環境・生物ストレスに対する樹木内部の水分挙動を把握するため、立木染色や立木凍結法によるcryo-SEM観察などの手法が用いられてきたが、いずれも観察の際にサンプルを破壊してしまう。本研究では、マイクロフォーカスX線CT(以下、µXCT)を用いて、木部内水分挙動を非破壊で観察する手法を検討した。
試料として、コナラ(環孔材)、カツラ(散孔材)およびモミ(針葉樹)の成木より、直径2-4mm程度(1-3年生)の枝を用いた。試料を4cm長に切断、樹皮を取り除いた後蒸留水で飽水させた。その後、実験室内で自然乾燥させてパラフィルムで密封し、µXCT装置(SMX-160CTS、島津製作所)で試料中央部を撮像した。撮像条件は、X線管電圧約35kV、X線源とディテクタとの距離(SID)200mm、X線源と試料との距離(SOD)を9.0~12.0mmとし、5-7µm/pixel、512x512ピクセルのCT画像を得た。撮像した試料を液体窒素で凍結後、凍結ミクロトームでCT撮像した部位の木口面を切削し、cryo-SEMで水分状態を観察した。また、別の飽水試料において、一定時間の自然乾燥とCT撮像を繰り返すことで、乾燥の進行に対する木部内水分挙動を追跡した。
CT画像から判断された木部空隙は、cryo-SEMで観察された空隙とおおよそ対応していた。コナラでは、大径の道管でまず空隙が発生し、同一年輪内の小径道管、前年の道管と空洞化が進行した。カツラでは、年輪境界の道管より空洞化が進行した一方、モミでは年輪最外部から内部に向かって空洞化が面的に進行した。以上の結果より、µXCTは連続的に木部内水分を可視化するのに有効であること、木部構造の違いにより乾燥下での通水系の空洞化の進行が異なること、などが示された。