| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-103 (Poster presentation)
北海道阿寒湖に棲息する淡水性糸状緑藻類Aegagropila linnaei.は、マリモと呼ばれる球状コロニーを形成する。Aegagropila linnaei.は緑藻であり、その生長は光合成によって支えられている。このため、光合成を律速する光環境をマリモ内部で測定することは、球状コロニーの形成や維持を考える上で重要であると考えられる。しかし、特別天然記念物であるマリモを用いて、その内部を調べた例は少なかった。本研究では、天然マリモを用いた実験に先立ち、養殖されたAegagropila linnaei.から作成された球状コロニーについて内部光環境の測定を行った。透明アクリル円筒中に固定したマリモの下面から白色高出力LED(300μmol m-2 s-1)で光照射し、上面から分光器の光ファイバー端末を挿入した。その結果、マリモ内部には外部からの光がほとんど届かないことが明らかになった。さらに、マリモ表層を取り出して、表層2cmまでの光環境をさらに詳細に測定することで、鉛直方向から照射された光も、表面から8mmで0.1%以下に減衰することを明らかにした。我々は天然のマリモの直径が数cmから30cmに達することを先行研究で報告している。これらの結果は、多くの天然マリモでも、中心部での正の純光合成の維持が難しいことを示唆していた。現在、ファイバーPAMを用いて光化学系Ⅱの解析を行っており、これについても発表する予定である。