| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-105 (Poster presentation)
大気CO2濃度は,近年,400ppmを越えつつある.温帯から寒帯にかけては温暖化によって,成育期間中の微環境だけでなく,冬期の積雪量,積雪期間と融雪時期,成育可能日数などが変動する可能性がある.夏期が短かい高緯度北極のツンドラ生態系では,これらの変動が顕著に表れ,維管束植物の生存に重要な影響をもつと考えられる.本研究では,スピッツベルゲン島ニーオールスンのツンドラ生態系において,優占的である維管束植物3種(Saxifraga oppositifolia,Salix polaris,Dryas octopetala)の葉およびシュートを用い,1)光合成のCO2濃度応答,2)光合成特性と葉形質(LMA,葉N)との関係を評価することを目的とした.Muraokaら(2002,2008)のチャンバーを改良し,携帯型光合成測定器LI-6400と組合せ,測定を行った.400ppm下および800ppm下の最大光合成速度は,Salix,Dryas,Saxifragaの順に高く,Muraokaら(2008)の結果と同様であった.800ppm下での葉光合成速度とシュート光合成速度は400ppm下に対し,Salixはどちらも1.3倍,Dryasはどちらも1.4倍,Saxifragaは1.5倍と1.6倍であり,CO2濃度上昇に対し,Saxifragaが最も敏感に応答する可能性が示唆された.