| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-106 (Poster presentation)
コナラ属樹木は、ある空間的なスケールで結実量が個体間で同調して大きく年次変動する豊凶現象(マスティング)を示すことが知られている。これら樹木の堅果生産量の多寡は、クマなどの消費者の行動や個体群動態にも大きな影響を及ぼすことから、その豊凶は社会的にも注目される。しかし従来、その結実調査は小規模な地点・個体を対象として行われてきたため、空間的な結実動態に関する知見は乏しい。そこでミズナラ、コナラの豊凶モニタリング調査から、これら樹木の結実変動の空間的同調性について検討した。
調査は、福井県内の26地点(ミズナラ15地点、コナラ11地点)において、2005年から2015年まで行った。調査地点の標高は50m~1100m、地点間の距離は最大120kmである。各地点で10~20本の固定調査木を設定し、毎年8月下旬から9月上旬の間に、個体ごとの着果量を目視で評価した。このうち一定の基準を満たす241個体(ミズナラ125個体、コナラ116個体)の結果を用いて解析を行った。
隔年結果指数(ABI)はいずれの樹種でも高く、明瞭な隔年結果傾向が認められた。個体間における結実変動パターンの同調性は、コナラよりもミズナラで高かった。またその同調性は、異なる地点間よりも同一地点内で高かったが、距離に応じて低下する傾向は認められなかった。ミズナラは2006、10、14年に多くの個体が結実不良となり、2009年には多くの個体の結実が良好であった。一方コナラは2006、10、13年に多くの個体が結実不良となったが、結実が良好な年は個体間でばらついていた。クラスター分析による結実変動パターンの類型化では、8割の個体が樹種ごとにまとまったグループに分類された。ミズナラ、コナラの結実変動の同調には、気象要因のように広域的に作用する要因が関与しており、またそれは樹種によって異なる可能性が示唆された。