| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-107 (Poster presentation)
北海道に天然分布する主要な針葉樹であるマツ科トウヒ属のエゾマツ(Picea jezoensis)は、近年になり天然資源の劣化が指摘され、資源回復に向けた様々な取り組みが行われるようになってきている。発表者らは、エゾマツの地理的変異を解明する研究の一環として北海道内の天然分布域をほぼ網羅する15産地から得られた材料を用いて、球果、種子の形態や種子の発芽タイミングの地域間差、集団間差の解析を行ってきた。今までに球果および種子の形態の解析では、明瞭な集団間差は見られず集団内変異が大きいこと、年平均気温が低く標高の高い地域産の種子は、発芽タイミングが遅れることを示した。今回は、5-15℃の変温条件に設定した種子の発芽試験を新たな発芽が確認できなくなるまで実施した結果を報告する。試験の最初の1ヶ月間で最終的な発芽数の約40%、2ヶ月間で約70%が発芽したが、その後も順次発芽を続け、最終的に新たな発芽が確認できなくなるまでに約1年10ヶ月かかった。発芽のタイミングは、同一個体内および産地内でも大きく変動し、同じ発芽条件でも発芽のタイミングが大きく異なる種子があることがわかった。また、以前に行った25℃の定温条件および10-20℃の変温条件と比較したところ、設定温度が低くなるほど全体の発芽タイミングが遅れる傾向を示した。