| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-109 (Poster presentation)

雌雄異株性低木種ヒメアオキのパッチの開花比・性比に影響を及ぼす要因

*鳥丸猛(三重大院・生資), 松下通也(森林総研・林木育種セ), 鈴木聖, 松山信彦(弘前大・農生)

雌雄異株性植物における有性繁殖の機会は、個体群内で開花した個体の割合(開花比)とともに開花した個体群における雌雄個体の比率(性比)からも影響を受けており、開花比・性比は個体群内においても場所ごとに変異に富んでいる。日本海側のブナ林の林床にはそのような雌雄異株性の常緑低木種が多数認められているが、それらの個体群内の開花比・性比に影響をおよぼす環境要因を検証した試みは少ない。そこで本研究は、青森県白神山地内のスギ二次林の林床に生育するヒメアオキ個体群を対象にパッチの空間分布および雌雄の生態的特徴を把握し、個体群の開花状況と開花性比に影響を及ぼす土壌の環境要因を検討することを目的とした。二次林の林床を踏査した結果、雌花をもつ幹のみで構成されたヒメアオキのパッチが20個、雄花をもつ幹のみで構成されたパッチが18個、雌花をもつ幹と雄花をもつ幹が混在するパッチが14個、開花が認められなかったパッチが1個それぞれ分布していた。パッチの性比(雌花をもつ幹の割合)とパッチの生態特性(パッチ面積、幹密度、推定幹数)、パッチが生育している土壌の化学特性(pH、電気伝導率、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、交換性カルシウムイオン、交換性マグネシウムイオン、交換性カリウムイオン、交換性ナトリウムイオン、有効態リン酸の濃度)、および土壌の物理特性(土壌含水比)の間の関連性をLasso回帰モデルを用いて分析した。その結果、有効態リンが性比に正の効果を及ぼしていた。さらに本報告では、パッチの開花比(開花幹の割合)についてもLasso回帰モデルを適用し、ヒメアオキが生育している立地の土壌化学・物理特性が雌雄の開花に及ぼす影響について議論する。


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