| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-113 (Poster presentation)
2001~2015年の15年間、石川県内の異なる標高域(230~1200m)や面積規模(1~27ha)の5箇所のブナ林で堅果の落下調査を実施し、堅果の豊凶周期性や葉の生産性の比較から、低標高域での小面積ブナ林の開花結実特性に与える影響を考察した。調査は、林内の5本の母樹下に1㎡のシードトラップを1個ずつ設置し(トラップを設置した母樹の間隔は20~30m)、4~12月まで約1か月置きにトラップの内容物を回収し、堅果を5つのカテゴリー(健全・シイナ・未熟・獣害・虫害)に仕分ける方法で行った。2015年は、堅果の総落下数が180.4~966.6個/㎡、健全落下数が7.8~550.4個/㎡で、1箇所を除けば並~豊作年であった。最も成績の悪かった低標高(230m)に位置する小面積(1ha)ブナ林は、結実周期が他のブナ林と同調的ではあるものの、開花数が少なく15年間で100個/㎡以上の健全堅果が落下した年はなく、他に比べシイナ率が高い傾向にあった。開花数の少ない原因として、低標高であることで何らかの気象条件が影響していることや、平均の葉生産量が少ないことなど花芽分化に不利な条件が関係していると考えられた。また、シイナ率が高い原因として、別の集団との距離が遠いこと、母樹密度が低い(ブナの胸高断面積割合が低い)ことなど、受粉効率の悪さが関係していることが考えられた。以上のことから、低標高の小面積ブナ林は、開花結実に不利な条件が重なりやすい状況下に置かれていると考えられた。