| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-116 (Poster presentation)
多くの植物で、種子の中には胚をひとつだけもっている。しかし、複数の胚をもつ種子(多胚種子)をつくる植物も存在する。多胚種子からは複数の実生が芽生える。だが、種子あたりの胚数が多くなると胚の成長への悪影響があることが報告されており、種子中に形成された全ての胚が芽生えるとは限らない。また、ひとつの種子から芽生えた実生同士は非常に近接しているため、実生数が多いと個々の実生が利用できる資源が少なくなり、実生の成長が制限されてしまう可能性がある。
そこでこの研究では、多胚種子植物ナガバジャノヒゲを用い、種子を解剖して胚の面積を測定することによって、胚数と胚の大きさの関係を明らかにした。また、室内での播種実験を行い、胚数や個々の実生の成長を記録することで、胚数が多いと実生数はどのように変化するのか、実生数が多いと、個々の実生の成長・生存率にどのような影響があるのかを調べた。胚や実生の成長には種子の大きさも重要だと考えられるため、種子の大きさが与える影響も同時に解析を行った。
胚数が増えると小さな胚の数が増加し、大きい種子ほど胚は大きかった。また、中程度の胚数で実生数は最も多く、実生数は大きい種子ほど多かった。実生の成長率は種子の大きさによる差がみられず、種子の中で遅く発芽した実生ほど成長・生存率は低くなった。これらの結果は、単純に胚数や実生数を増やすことがナガバジャノヒゲの種子にとって利点になるわけではないことを示唆している。