| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-118 (Poster presentation)

発熱植物における「花の匂い生産」についてのトランスクリプトーム解析

*恩田義彦(理研), 持田恵一(理研), 吉田拓広(理研), 櫻井哲也(理研), Roger Seymour(アデレード大), 梅川結(岩手大), Stergios Pirintsos(クレタ大), 篠崎一雄(理研), 伊藤菊一(岩手大)

植物のいくつかの種は、発熱することにより体温を外気温よりも上昇させることができる。植物における発熱現象は1778年のラマルクによる記述まで遡ることができるが、発熱現象に関わる遺伝子発現の全体像は、明らかになっていない。本研究では、発熱植物の1つであるサトイモ科の Arum concinnatum におけるトランスクリプトーム解析を実施した。本植物は一過的に発熱する特徴があるため、発熱前と発熱中のサンプルを採取した。また、花器官は、male florets・female florets・appendixの3つに区別でき、それぞれの組織は発熱の程度が異なる(maleはやや発熱、femaleは発熱しない、appendixは高発熱)。このようなサンプルの特徴を生かし、発熱現象に関連する遺伝子を「発熱パターンと遺伝子発現パターンが有意に相関するもの」と定義して解析した結果、1266個の転写物を見出した。これらの中には、植物の既知の発熱因子であるシアン耐性呼吸酵素をコードする遺伝子も含まれていた。さらにGene Ontology Enrichment Analysisの結果、MEP経路(非メバロン酸経路)の1-deoxy-D-xylulose-5-phosphate synthase activityが最もエンリッチされた。本植物では、テルペノイドが発熱時の主要な匂い物質であるという報告(Urru et al., 2011)と併せると、匂い生産の主要な代謝経路はMEP経路であることが示唆された。


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