| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-131 (Poster presentation)

ヤクタネゴヨウ林分における外生菌根菌の埋土胞子群集

*村田政穂(東大院・新領域), 金谷整一(森林総研), 奈良一秀(東大院・新領域)

ヤクタネゴヨウは屋久島と種子島にのみに生育する日本固有の針葉樹で,絶滅危惧種に指定されている.演者らはこれまでに,ヤクタネゴヨウ林分の成木の外生菌根菌(以下菌根菌)を調べ,Cenococcum geophilumやベニタケ科,イグチ科などが高頻度で検出されたことを明らかにした.これらの成木の菌根から菌糸体が土壌中に伸び,新たに伸長した根や更新実生の感染源になる.一方,土壌中には休眠状態の菌根菌の胞子が存在しており,攪乱後の実生の感染源として重要な役割を果たすことが知られている.そこで本研究では,ヤクタネゴヨウの保全に関わる菌根菌についての理解を深めるため,土壌中にどのような菌根菌が埋土胞子として存在しているかを明らかにすることを目的とした.屋久島の2林分(26と21地点)と種子島の1林分(32地点)のヤクタネゴヨウの成木の周辺で5×5×10cmの土壌ブロックを採取した.サンプリングした土壌から根などの粗大有機物を取り除き,約2~3ヶ月(一部8ヶ月)常温で風乾し,バイオアッセイに供した.バイオアッセイは,チューブに土壌を入れ,ヤクタネゴヨウとゴヨウマツ,アカマツ,スダジイの種子を植えて約6ヶ月間育苗した.各苗の乾重を計測し,根系を実体顕微鏡下で観察して菌根の形態類別を行った.各実生で見られたそれぞれの菌根形態タイプについて,rDNAのITS領域の塩基配列を用いて菌種の同定をした.ヤクタネゴヨウとゴヨウマツで最も優占していた菌種は,Rhizopogon sp.1だった.一方,アカマツとスダジイではC. geophilum が最も優占し,スダジイではRhizopogonSuillus は全く検出されなかった.Rhizopogon sp.1は成木の菌根菌でもヤクタネゴヨウでのみ検出されており,ヤクタネゴヨウの生育に深く関与している可能性が示唆された.


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