| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-133 (Poster presentation)

本邦シイ林における外生菌根菌群集構造の地理的パターン

*松岡俊将(京大・生態研セ), 川口恵里(京大・医), 大園享司(京大・生態研セ)

外生菌根菌の種多様性や群集組成は,宿主植物種,気候・土壌環境,空間要因などの影響を受けて空間的に変化することが知られている.しかし,調査地が複数の気候帯にまたがる場合,気候帯の変化とともに宿主種も変化してしまうため,同一宿主内において気候,環境,空間要因がどのように種多様性や群集組成に影響を与えているのかは依然よく分かっていない.本研究では,亜熱帯域から温帯域にかけて分布するスダジイ(Castanopsis sieboldii)を対象に,外生菌根菌群集の地理的パターンと,種多様性・種組成に影響を与える要因を解明することを目的とした.

2011年,2012年,2013年の7-9月に,石垣島(北緯24度)から佐渡島(北緯38度)までの国内12地域において,成熟林中のスダジイの成木直下から樹木細根を含むFH層ブロックを採集した.各ブロックから外生菌根を選び出し,Roch 454シーケンサーを用いて菌根中に含まれる菌類rDNAのITS1領域の塩基配列を決定した.配列は97%の相同性により操作的分類群(OTU)にまとめた.各OTUはデータベースとの比較により分類群の推定を行った.

合計365 OTUの外生菌根菌が検出された.OTU数は調査地の年平均気温と有意な負の相関がみられ,低緯度の地域ほどOTU数が低下していた.一方,OTU組成についても有意な地理的構造が見られた.OTU組成の空間変動に対する土壌環境,気候,空間要因の相対寄与率をdb-RDAに基づくvariation partitioningにより推定したところ,土壌環境・気候・空間はそれぞれ6.6%,13.5%,17.9%(合計34.1%)を説明した.このことから,外生菌根菌群集の地理的変化には気候要因に加えて,空間要因も強く影響していることが示唆された.


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