| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-136 (Poster presentation)
植物ウイルスの研究の多くは作物病について行われており、自然生息地における生態学的な研究はまだ少ない。本研究では、RNA-Seqを用いて野生植物に感染しているウイルス種を網羅的に同定し、ウイルス種間、ウイルス-宿主間の相互作用を調べた。rRNAの選択的分解法を用いたRNA-Seqは、ゲノムの種類や末端の形状によらないウイルスの網羅的な検出や、宿主植物のトランスクリプトームデータの解析を可能にする。兵庫県の野外調査地に生育する多年生植物Arabidopsis halleriを対象にRNA-Seqを行った結果、Turnip mosaic virus (TuMV), Cucumber mosaic virus and Brassica yellows virus の3種類のウイルスを検出した。ウイルス同士の重複感染はTuMV感染葉で有意に起こりやすいことが明らかとなり、TuMVが持つ宿主防御の抑制遺伝子がその関係を促進していると考えられる。同時に、宿主側の遺伝子発現解析からはウイルス感染個体でのAGO2の発現上昇がみられ、宿主の防御応答とウイルスによるその抑制が働きあっていると考えられる。上記3種類のウイルスは別の調査地からも検出され、TuMVを含む重複感染は同様に高頻度でみられた。植物種間で共通にみられるウイルス種については今後、その移動の解明が必要である。また、ウイルスの伝播方法、植物の成長・繁殖への影響や、他の調査地を含めた調査を行っていく予定である。