| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-140 (Poster presentation)
日本海側の砂浜は、潮汐幅が小さいため干潟の発達がなく冬期の季節風による底質の撹乱が大きいという特徴がある。砂浜汀線域の細菌群集は、波によって打ち寄せられた水中懸濁物や流れ藻などの漂着有機物を分解する機能を担っており、異地性有機物に依存する砂浜生態系のなかで重要な地位を占めていると考えられる。バイオログプレートは、元々は細菌類の同定を目的として開発された市販キットである。マイクロプレートの各ウェルに95種の異なる炭素源有機物が添加されており、一定量の菌体懸濁液を投入後、細菌の増殖に伴う発色を観察して炭素源資化能力を判定することができる。本研究では、砂浜汀線域の底質中の細菌群集を対象とし、主に砂粒子表面に付着していると考えられる細菌群集全体の炭素源資化活性をバイオログプレートによって調べ、その季節変化を明らかにした。
新潟市越前浜の汀線域の中央部と打上帯おいて、直径2.8cmのコアにて表層(0-1cm)と深層(4-5cm)の砂を2ヶ月に一度採集した。採集した砂は滅菌2.5%食塩水にて10倍に希釈して撹拌した後、100倍および1000倍の3段階の希釈試料を作成し、バイオログGN-2プレートに接種した。プレートは23度で培養し、48時間後に発色が確認された陽性ウェル数を求めた。
陽性ウェル数は冬期に少なく夏期に多いという明確な季節変化を示した。汀線域表層では7月に最大値を示したが、汀線域深層と打上帯では9月に最大値を示した。陽性ウェルの組成は季節および砂の採集地点によって若干異なった。これらの季節変化は、水温と供給される有機物および砂基質の撹乱の季節変化と関連していると考えられた。なお本研究の一部は水産庁漁場環境生物多様性評価手法実証調査事業の委託で行った。