| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-147 (Poster presentation)
「パッチ状生息地」と「連続的生息地」は,総面積が同じなら,生息種数や個体数の点で差がないのだろうか? 本研究では,地上解像度8cmの高解像度航空写真画像を用いて生息地の検出を試み,生息地の面積とタマイタダキイソギンチャク(ハマクマノミの唯一の宿主)の生息個体数との関係を探った。ハマクマノミの個体数はタマイタダキイソギンチャクの個体数と高く相関し,石垣島では魚類の生息種数の高い礁池ではハマクマノミの出現率が高いことが知られている。
サンゴ礁の高解像度航空写真には「パッチリーフ」や「連続リーフ」などの景観要素が反映される。Hattori & Shibuno (20010, 2013, 2015)は,大リーフでは垂直面の割合が減少して種間競争が大きくなるため,総面積が同じなら小リーフ群で生息種数が多くなることを示唆した。本研究では,石垣島白保の礁池において,立体視が可能な画像を2枚用い,ステレオスコープによって高さ1.5m以上の立体リーフを抽出し,また,画像解析によって暗礁部(画像暗色部)の抽出も行い,これらの面積を求めた。高解像度航空写真画像を野外で地図として用い,約3ha内で生息個体数を調べ,生息地面積との関係を探った。
タマイタダキイソギンチャクの個体数は,立体リーフの総面積とは相関せず,画像暗色部(暗礁)の面積と高く相関していた。水中観察の結果,画像暗色部は高さ50cm以上のリーフであり,立体リーフの干出部に画像暗色部はなかった。大リーフは干出部(生息に不適な空間)が大きいために,面積の割に生息個体数や生息種数が多くならないと推察された。小リーフを半球,大リーフを半球台と仮定すると,浅い礁池では画像暗色部の面積で生息空間の体積を近似できた。高解像度航空写真画像の暗色部(暗礁部)の面積は,保全優先地区の選定の際に有効であろう。