| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-150 (Poster presentation)
猛禽は開発など人の影響を受けやすく、世界的に保全のシンボルとして重要な役割を果たしてきた。複数種の猛禽類が同所的に生息することは多く、食物メニューなどへの影響が報告されている。希少猛禽などの生息地保全の有効な手段として生息地評価モデルがあり、保護区デザインなどに応用されている。しかし、同所的に生息する他の猛禽の影響を含めた生息地評価モデルは、私たちの知る限り報告されていない。
サシバは、里山景観の生物多様性の象徴として注目されてきた猛禽である。本種の分布中心に位置する栃木や千葉の谷津田では、採食行動や行動圏利用の解析をもとに、本種が水田と広葉樹林の隣接する林縁の多い場所を選好することが示されている。 一方、サシバの分布北限に位置する岩手中部では、林縁などの景観要素が重要ではあるものの、分布中心にくらべてその重要性が小さいことが、演者らの解析によって明らかになった (Fujita et al. 投稿中)。この地域差が生じる要因として、私たちは、東北地方の里山景観でサシバと同所的に生息するノスリの影響を考えている。ノスリは、日本国内では北方に分布中心がある。主な食物はネズミやヒミズなどの小型哺乳類であるが、トカゲや大型昆虫を採食することも知られており、サシバの食物と類似している。
私たちは、東らが5年以上にわたりサシバを調べてきた岩手中部の農地を対象に、2015年の繁殖期、景観スケール (約50km2) でのサシバとノスリの繁殖分布を調べ、サシバの繁殖場所以外の農地のほとんどにノスリが分布していることがわかった。発表では、サシバとノスリの景観選択を解析するとともに、サシバの主要食物であるカエル類の分布と合わせて報告する。また、ノスリの密度が高い東北地方でのサシバとノスリの種間関係を議論するとともに、サシバの生息地評価にその種間関係がおよぼす影響も整理する。