| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-155 (Poster presentation)
苫小牧市の東部に位置する安平川湿原は、スゲやヨシが優占し、フェンを主体とする良好な湿性草原が広がっている。この地域は遊水地化が決まっており、治水と自然環境の保全の両立を目指している。本研究では、湿原内の鳥類相を把握し、草原性鳥類の生息状況と地下水位や植生との関連を明らかにしたので報告する。湿原内の16地点に自動録音機を設置して、録音できたさえずりから鳥相を把握した。また録音機を設置した地点に水位観測井戸を設置して水位を測定したほか、1×1mもしくは3×3mの方形区を設定して植生調査を行った。確認できた鳥類は31種であった。湿原の北側は、比較的水位が高く、ハンノキの侵入はほとんどなく、良好な湿性草原が広がっており、このような地域ではマキノセンニュウ、シマセンニュウ、コヨシキリ、ノビタキの4種の出現率が高かった。一方、水位が低く、ハンノキなどが侵入している地域では、ノゴマやアオジの出現率が高くなり、マキノセンニュウ、シマセンニュウ、コヨシキリ、ノビタキの4種の出現率が低くなった。逆に、水位がこれ以上高くなると、地上に営巣するノビタキとマキノセンニュウが減少することが予想される。安平川湿原は、フェンを主体とする良好な湿性草原が湿原北部に広がっており、この良好な環境を維持するということは、鳥類の視点からは、マキノセンニュウ、シマセンニュウ、コヨシキリ、ノビタキの4種の生息状況を高く維持するということであると考えられる。