| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-156 (Poster presentation)

デジタルカメラ画像を用いた植物プランクトンブルームの客観的識別手法の検討

*中野 善 (水産総合研究セ), 永井 信 (JAMSTEC), 岡村和麿, 樽谷賢治 (水産総合研究セ)

植物プランクトンブルームは海洋における季節的な生物イベントの一つであり、生態系を健全に駆動する上で重要な役割を果たす。しかし、環境浄化能力が低下した沿岸生態系では、植物プランクトンの沈降による有機物の堆積が、貧酸素水塊の発生、ひいては二枚貝類の減少に繋がる一要因であると考えられている。したがって、ブルームの発生を迅速かつ正確に捉えることは、漁場環境保全を考える上できわめて重要な課題である。

有明海や八代海では船舶および自動観測ブイによるブルーム観測が現在も継続的に実施されているが、さらなる観測体制の増強はコスト的に困難である。そこで本研究では、設置型無人撮影機により連続撮影した画像に基づくブルームの検出・識別技術の開発を目的とした。本報では、画像からの海色の定量化ならびにブルームの指標となる値の算出結果を報告する。

有明海奥部9定点および橘湾の 1 定点(ブルーム発生地点)において撮影した海面画像について、赤・緑・青の輝度(RGB値)を評価基準として海色を数値化した。次に RGB 値の代表値から赤色または黄色を検出できる指標値を算出した。さらに、海面撮影時の海水サンプルの直接検鏡によりブルーム原因種を同定し、細胞密度を求めた。これらのデータを比較・検討した結果、①ブルーム時には視覚的に赤潮であると判別できる範囲の指標値が顕著に上昇すること、②細胞密度が1,000cells/mLを超えると指標値が頭打ちになること、等が明らかとなった。これらにより、指標値に基づくブルーム検出の可能性が抽出され、ブルーム検出においてデジタルカメラの活用は有効であると考えられた。 今後、ブルーム検出・識別の精度、発生種毎の特性、デバイスの改善、コスト等を更に検討することで、ブルーム観測の新たなツールとなることが期待される。


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