| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-158 (Poster presentation)
近年,農村地域における中大型哺乳類による農作物被害が増加しており,社会問題となっている.本研究の対象種となるニホンザルは,昼行性であり,季節的に利用可能な農地への依存が高くなることも示唆されている.よって,ニホンザルの被害軽減のためには,捕獲が対策の中心となるイノシシやニホンジカとは異なる対策が必要だとされている.その中でも推奨されているのは電気柵による防除や集落への出没を予防する集落ぐるみの追い払い対策である.しかしながら,そうした対策が実際にどの程度普及しているのかといった定量的な調査は行われておらず,多様な農村環境とニホンザルの集落出没との関係も部分的な検証にとどまっている.
本研究では兵庫県中東部に位置する篠山市において,2015年の7~11月の5ヶ月間に渡ってニホンザルの追跡調査を行った.篠山市は,電気柵の設置補助や追払い推進のための出前講座,サルの位置情報の配信など,住民が主体となって被害防除に取り組むための多様なメニューを提供しているのが他地域の自治体と異なる点である.篠山市にはニホンザルが5群生息しているが,そのうち人馴れが進んでいる1群を対象とし,ラジオテレメトリ法と直接観察法を併用して群れの位置情報を得た.また,ニホンザルに対する人の追払い状況についても追跡調査中に記録した.調査期間中は,土地利用調査としてドローンを用いた圃場作付け調査や,柿や栗などの果樹の分布調査なども合わせて行った.
これらの結果より,一般線形化モデルを用いて,人の追払いや電気柵の情報も含めた空間分析を行い,多様な被害対策が行われている地域におけるニホンザルの動態について考察する予定である.