| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-159 (Poster presentation)

沿岸域の底生生物を死滅させる二枚貝マットと大型海藻の堆積:局所空間形成パターンの抽出

*山田勝雅(水研セ・西海区), 宮本 康(鳥取県・衛環研), 中野 善(水研セ・西海区), 畠山恵介(鳥取県・衛環研)

空間形成パターンの定量化によって背後に潜む生態的プロセスを推測することは,生態学の主要な課題のひとつである.陸域(森林や草原)において,近年のRS,GIS技術の発達を背景に様々な研究が展開されている一方で,海域においては海面下の生物分布は捉え難く,対象生物のパッチ形成範囲に基づいた適切な空間スケールでの調査も困難な場合がある.

富栄養化が進行した1970年代以降,沿岸浅場域の干拓工事等(環境改変)に起因する二枚貝や大型海藻の大量発生が頻発し社会問題化している.異常増殖した二枚貝や海藻は被覆堆積し,マット下には貧酸素,還元底質が形成され,これによりベントス群集の生物多様性や種の個体群サイズの衰退が起きる.沿岸浅場に負の効果をもたらすこれらのマットの形成パターンの把握には,これまで航空写真などを用いた比較的大きな空間スケール(例えば数100m平方)を最小スケールとして画分した事例がある.一方,沿岸浅場域に生息する底性生物の多くが,メソスケールレベル(数から数10m)のパッチを形成することも示唆されている.本研究は,二枚貝(ホトトギスガイ)と大型藻類(オゴノリなど)の堆積が著しい中海を対象に,これらの空間動態,季節消長からマット形成パターンをメソスケールレベルで評価することを目的とした.

物理環境の異なる4定点に0.25m平方を最小単位とした1600メッシュの永久コドラートを設置した.毎月の潜水により各コドラートの被度を測定し,各定点の空間自己相関を評価した.その結果,二枚貝マットには空間自己相関が認められなかった一方で、海藻マットでは海藻被覆が数m規模のソースを起点に拡散する傾向が得られた.このことは,海藻と二枚貝のマット形成が異なる生態的プロセスを経て形成される可能性を示唆している.


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