| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-160 (Poster presentation)

ニホンアカガエルの遺伝的構造と景観要素との関係

*小林聡, 阿部聖哉, 富田基史, 松木吏弓(電中研・生物)

ニホンアカガエルは水田と森林を生息環境とする里山の指標種である。これまでのmtDNAやmicrosatelliteを用いた解析では、産卵場間の遺伝的交流に、水路や道路等の人工構造物が影響を及ぼしている可能性が示唆された。ダルマガエルなど他のカエル類でも、道路脇の側溝や護岸された水路などが移動分散の障壁になっていることが示されている。加えて、繁殖地間の遺伝的交流には、成体の移動分散に影響を与える土地利用ごとのコストを考慮する必要がある。

そこで、本研究では好適なハビタットの構造を考慮した上で、道路や護岸河川など障壁となりうる構造物の影響を評価するため、GISを用いて各要素に抵抗値を与えた繁殖地間のコスト距離を計算することで、それらの障害物と遺伝的距離との関係性を解析した。

土地利用ごとの抵抗値は既存研究を参考に、畑地にやや不適なハビタットとしての抵抗値5を与え、人工地に不適なハビタットとしての40を与え、放棄水田を含む湿地、水田、水域を好適なハビタットとして抵抗値を与えず森林、草地について抵抗値5を与えた場合と、森林と草地も好適ハビタットと考え抵抗値を与えなかった場合とを比較した。障壁については、約10m幅の道路及び約3m幅の護岸河川を想定し、バリアーなしと考えた場合から抵抗値500まで五段階の抵抗値(1、100、200、500)を与え、それぞれ護岸河川を高くした場合と双方を同程度とした場合を計算して比較した。10パターンを比較した結果、相関係数が最も高かったのは森林や草地を好適ハビタットとし、道路や水路を200に設定した場合であった。以上の結果は、ニホンアカガエルが移動分散に森林や草地を利用すること、道路及び護岸河川の両方が同等に移動の障壁となっていることを示唆している。


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