| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-163 (Poster presentation)
本研究は,微粒炭等炭化物についての基礎的研究の一環として,半自然草原地表部に残る微粒炭等炭化物について調べたものである。調査地は中国山地で,1箇所は広島県北西部で島根県境に近い雲月山(北広島町),もう1箇所は兵庫県北西部で鳥取県境に近い上山高原(新温泉町)である。両地とも,多雪地で,冬には毎年1mを超える積雪があるところである。
各調査地は,ともに火入れにより維持されている草原があり,そこにはススキを中心とした植生が広く見られるが,そうしたススキ草原の中にも,一部にはササやワラビなどを中心とした大小の草原の部分もある。また,両地とも山地のため,場所により標高や地形が異なる。そのように必ずしも一様ではない草原の地表部に,どのような微粒炭等炭化物が残されているかを調べた。
各調査地における地表部の試料採取は,2015年11月に,具体的な場所の植生や地形などを見ながら,計20数地点で行った。採取した試料は,それぞれ約2cm3を常温の室内で水酸化カリウム溶液(10%・48時間),過酸化水素(6%・12時間)により処理することなどにより微粒炭等炭化物を抽出した。
抽出した微粒炭等炭化物は,それぞれ250µmと125µmのメッシュの篩を重ねて用いて篩分けし,125µmのメッシュの篩に残ったものをプレパラートとした。微粒炭は,落射顕微鏡を用いて400倍の倍率で観察し,意図的にならないよう順次100個写真撮影を行い,その後,表面形態ごとに9つタイプと「その他」に分類して検討した。
その結果,2つの調査地は,概すればススキ草原と言えるところではあるが,地表部に残された微粒炭等炭化物は,各試料採取地点の比較的小面積の植生を反映したものである場合が多いと考えられる。一方,同様な植生の場合,地形などによる顕著な変化は見られなかった。