| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-206 (Poster presentation)
さまざまな分類群において、繁殖をした雌(RF)より繁殖を妨げられた雌(NF)の生存日数(LS)は長くなる(操作実験)。これは繁殖と生存のトレードオフ(T-O)によると考えられている。操作実験によって示されるT-Oは、どのような遺伝因子に選択が作用することによって進化するだろうか。老衰の進化理論に従えばLSの進化(短縮)は、RFの初期の繁殖への投資量(ERI)とRFのLSのT-O(負の遺伝相関)によって生ずるが、NFのLSの進化を説明しない。操作実験によるT-Oをもたらす遺伝因子がわかれば、老衰の進化理論におけるT-Oとの関係もわかるだろう。NFはERIを繁殖から生存に転換させLSを延長させることができる。RFのERIが増加するとRFのLSが短くなるがNFのLSを長くさせる遺伝因子は、選択によって操作実験によるT-Oを進化させると仮説をたて、その検証を行った。
アズキゾウムシの雄36匹のそれぞれを3匹の雌と交配し、生まれた娘をRFとNFの2つに分けた。RFでは日齢2, 3, 4, 5の産卵数、LS、乾燥重量、NFではLS、乾燥重量を測定した。
(1)RFよりNFのLSが長かった。(2)半きょうだい分析から、8形質の相加的遺伝分散‐共分散行列(G matrix)を推定し、主成分分析を行った。第2主成分の固有値は0より有意に大きく遺伝分散があり、固有ベクトルの係数はRFの日齢2の産卵数、RFのLS、NFのLSがそれぞれ正、負、正だった。
以上のことから、RFのERIが増加するとRFのLSが短くなり、NFのLSが長くなる遺伝因子が存在し、選択によって操作実験によるT-Oの進化が可能であると結論した。老衰の進化理論におけるT-Oと操作実験のT-Oは、同一の遺伝因子によることがわかった。