| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-210 (Poster presentation)

表現型可塑性の種内変異:動物プランクトンの誘導防衛から考える

*永野真理子(東大・総合文化),吉田丈人(東大・総合文化)

変動環境への生物の適応をもたらす表現型可塑性は、自然条件や操作条件での環境変化に応じてどのように形質が変化するかによって評価されてきた。可塑性のある形質は、1個体中に複数あり、それらが同時多発的に発現し、発生段階によってその組合せが異なるなど、複雑な発現様式を示す。このような複数形質の可塑性のばらつきは、種間はもとより種内でも存在することが知られているが、定量的に評価された研究は少ない。また、形質変化を誘導する因子は、同じ形質の可塑性であれば種内で同一であると考えられており、誘導因子の種内変異が報告された例は少ない。本発表では、プランクトンを対象とした2つの系をもちいて、捕食リスクに対する可塑性の種内変異を明らかにした研究を紹介する。第一に、同所的に生息する2種のミジンコにおいて、複数の形態形質による防衛を総合的に定量化することで「可塑性の大きさ」を定義し、そのパターンを種内クローン間で比較した研究を紹介する。第二に、フサカ幼虫の魚捕食者に対する防衛行動において、同種の複数個体群を比較した研究を紹介する。ミジンコの可塑性の大きさは、ミジンコの体サイズが捕食されやすいサイズのときに高く、捕食されにくい体サイズでは低くなる傾向が見られ、2種のミジンコがサイズ選択的捕食に対して効率的に形態防衛していた。また、可塑性の大きさのクローン間変異のパターンは、2種間で異なった。フサカ幼虫の研究では、防衛行動の誘導要因に、地理的な変異があることがわかった。ある湖のフサカ個体群では、光の変化だけで防衛行動が誘導されたが、他の湖の個体群では、捕食者が出すカイロモンと光の変化の両方が誘導要因になっていた。これらの研究は、誘導防衛には、異所的にも同所的にも種内変異があり多様であることを示している。


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