| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-216 (Poster presentation)
捕食寄生蜂はその発生過程において宿主を死に至らしめるため,宿主となる昆虫は捕食寄生蜂の寄生に対する抵抗性(寄生蜂抵抗性)を進化させていることが知られている.ショウジョウバエ-捕食寄生蜂系は宿主の寄生蜂抵抗性進化のモデル系であり,ショウジョウバエの寄生蜂抵抗性に関する数多くの研究が行われてきた.これまでの研究から,キイロショウジョウバエDrosophila melanogasterの寄生蜂抵抗性には,細胞性免疫応答の一つである包囲化反応が関与していることが明らかにされており,その免疫機能に関しては詳細な研究が行われてきた.その一方で,寄生蜂抵抗性の遺伝基盤に関しては未解明な点が多く残されている.本研究では,全ゲノム解読済みのキイロショウジョウバエ系統を用いたゲノムワイド関連解析を行うことにより,寄生蜂抵抗性に影響を与える遺伝変異をゲノム網羅的に検証した.ショウジョウバエ幼虫に寄生する捕食寄生蜂Leptopilina victoriaeを各キイロショウジョウバエ系統に寄生させ,羽化したハエ及び寄生蜂の個体数から各系統の寄生蜂抵抗性を査定した.その結果,キイロショウジョウバエ系統間には捕食寄生蜂L. victoriaeに対する抵抗性に変異が存在することが明らかになった.そこで,系統間でみられた寄生蜂抵抗性変異と一塩基多型(SNP)との関連について解析を行い,寄生蜂抵抗性に影響を及ぼすSNPを特定した.本発表では,特定されたSNPから寄生蜂抵抗性に関与する候補遺伝子を推定し,キイロショウジョウバエにおける寄生蜂抵抗性の分子基盤について考察する.