| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-273 (Poster presentation)

ミドリイシ雑種体の繁殖特性の違いによる種分化と交配隔離両立の可能性

*磯村尚子(沖縄高専・生物資源), 岩尾研二(阿嘉島臨海), 守田昌哉(琉球大・熱生圏), 深見裕伸(宮崎大・農)

世界中に約150種が生息するミドリイシ属サンゴは,雑種種分化により形成されたと考えられている.ミドリイシ属サンゴ2種,サボテンミドリイシとトゲスギミドリイシを対象に,雑種種分化に重要である「雑種体の妊性」を明らかにし、さらに卵と精子の組合せにより雑種体の繁殖特性が異なることを確認した.本発表ではその報告と考察を行なう.

2007年に対象2種の雑種体を形成し飼育してきた.2014年および2015年夏季に雑種A(トゲスギ卵×サボテン精子),雑種B(サボテン卵×トゲスギ精子)の産卵を確認後,交配実験と発生観察を行ない,以下の結果を得た:(1)産卵日時;雑種Aは両年共に親種と同じ日,同じ時刻に産卵した.一方雑種Bは, 2015年は親種よりも一ヶ月遅れて産卵した.(2)バンドル数;両年共に,雑種Aは数十バンドル,雑種Bは百以上のバンドルを放出した.(3)他群体との交配;雑種体同士の交配は85%の高い受精率であった.雑種Aでは戻し交配はみられなかったが、雑種Bは戻し交配で90%以上の受精率を示した.(4)自家受精;雑種Aでは自家受精はみられず,雑種Bは両年共に高い自家受精率を示した.(5)胚発生;受精ができた組合せでは,受精率に関わらずプラヌラ幼生まで発生した.

両親の組合せを同じくする雑種体であっても,卵と精子の由来により,雑種体の繁殖特性に違いがあることがわかった.このように,繁殖特性が異なる雑種体が存在することで,雑種体形成と交配隔離が両立している可能性がある.


日本生態学会