| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-274 (Poster presentation)
侵略的外来種による近縁種の競争排除メカニズムは未解明な部分が多い。沖縄本島では、過去に侵入した外来種カダヤシを、新たに侵入した外来種グッピーが排除するというパターンが経験的に知られているが、具体的なメカニズムは不明である。グッピーとカダヤシでは共に、成魚による仔稚魚の共食いおよびギルド内捕食が起こる。我々は、グッピーによるカダヤシの競争排除の一因として、仔稚魚に対するギルド内捕食の回避戦略の違いに注目した。出産間近のグッピー母魚では、集団から1頭に隔離すると速やかに出産することが予備観察により明らかになっている。集団条件下では他個体による仔稚魚捕食を回避するため「産み控えて」いると推測される。本研究では、グッピーとカダヤシの母魚について、同居させる魚の有無と種類を操作(隔離または他個体(2種×雌雄)とペア)し、出産までの日数、母魚の生存日数、同居魚の生存日数を調査した。
解析の結果、種間で出産までの日数に違いは無かった。同居魚の操作は出産までの日数に有意に影響した。特に、メスのカダヤシと同居させた母魚の出産は大きく遅延した。同居魚の生存日数は、カダヤシ母魚と同居させた場合にグッピー母魚と同居させた場合より有意に短くなった。一方で、母魚の生存日数に対する同居魚の種や性の効果は検出されなかった。これらの結果から、グッピーとカダヤシの母魚はいずれも、高い捕食リスクを認識して可塑的に出産をある程度順延できる可能性が示唆された。また、メスのカダヤシが母魚の出産を抑制し同居魚の生存率を低下させる要因の一つとして、接近した魚に対するアグレッシブな行動が考えられた。本研究ではグッピーとカダヤシにおけるギルド内捕食の回避戦略の違いは明らかとならなかったが、カダヤシの方が同種・他種に関わらず他個体に対して生存率を下げ出産間隔を拡大させるという負の影響が大きい傾向が見出された。