| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-302 (Poster presentation)

エビヤドリムシの生活史を見直す:クリプトニスクス幼生に寄生される宿主サイズから

*伊谷行, 前川愛子, 近藤佳澄, 清水綾乃, 上田いずみ, 毛利幸村(高知大・教育), 久米洋(愛媛県水研セ), Y. Wardiatno, 玉置昭夫(長崎大・水産)

エビヤドリムシはエビ・カニ・ヤドカリ類の鰓室または腹部に寄生する等脚目の甲殻類である。着底期幼生であるクリプトニスクスが終宿主へ着底すると雌へと成長し、次に着底した幼生は雄となってペアを形成する。エビヤドリムシのペアは宿主の脱皮時に捨てられることなく、宿主とともに成長する。ここで、着底プロセスに注目すると、一般的に、クリプトニスクス幼生は宿主の幼体に寄生を開始するとされている。一方、米国で外来種として爆発的に個体数を増やして宿主のアナジャコ類の個体群に影響を与えているOrthioneでは、その限りではない。このグループの寄生生態の一般性の有無を検証するためには、より多くの種を用いた研究が必要である。そこで、高知県浦ノ内湾においてヨコヤアナジャコとコブシアナジャコ、熊本県白川河口干潟においてニホンスナモグリの定期採集を行い、寄生するエビヤドリムシ類5種の着底のタイミングを明らかにした。その結果、クリプトニスクス幼生は幼体〜小型の宿主個体からのみ得られた。また、エビヤドリムシ類の体長は、いずれも宿主の甲長と極めて高い相関があり、クリプトニスクス幼生の着底が宿主の幼体時に行われて宿主とともに成長したことが示唆された。飼育実験により、大型の宿主にエビヤドリムシ類の小型個体が寄生している事例の少なくとも一部は、ペアの雌が死亡して残された雄が性転換して成長しているものであることが明らかになった。つまり、クリプトニスクス幼生が成長した宿主に着底することは極めて稀であることが示唆された。Orthioneは宿主の成体に着底できるという例外的な生活史特性のために、外来種となり得たのかもしれない。


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