| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-417 (Poster presentation)

アルゼンチンアリの好きな木、嫌いな木

瀬古祐吾,西野惇志,澤畠拓夫,*早坂大亮(近畿大・農・環境管理)

アルゼンチンアリは,物資の輸送に伴い,世界各地で非意図的に侵入している.アルゼンチンアリは,その高い繁殖力やスーパーコロニー性,また,資源競争の優位性などから生物多様性の脅威となっており,本種の防除・根絶は急務である.化学的防除は害虫防除の有効な手段のひとつであるが,環境へのリスクの高さが指摘されており,生態系や生物多様性に配慮したより有効な手法の開発が望まれる.本研究では,アリ類と同翅目昆虫との相利共生関係に着目し,アルゼンチンアリの樹種選好性とそのメカニズムについて明らかにすることで,その宿主である樹木の管理に基づく,低リスク型の新たな防除手法の開発が可能になると考えた.調査は,兵庫県神戸市のポートアイランドおよび摩耶埠頭で実施した.アルゼンチンアリの樹種別利用状況の調査は,50 mlの遠沈管を用いたショ糖ベイトトラップ法で行った.対象樹種は,調査地域の街路樹のうち優占する5種(クスノキ,カイズカイブキ,シャリンバイ,キョウチクトウ,ヤマモモ)を選定した.トラップ調査は樹種あたり20本とし,樹高1.5 mの位置にトラップを1個設置し,24時間後に回収の上,アルゼンチンアリおよび在来アリ類の種数や個体数を計数した.調査期間は2015年の4月から12月までとした.調査の結果,期間を通じて本種の個体数はヤマモモで最も多く,次にシャリンバイの順で,カイズカイブキやクスノキでは少ない傾向にあった(P<0.05).また,利用木の頻度についてみると,ヤマモモは他の樹種に比べ,利用木数の変動が少なく,比較的安定して高い値を示すことが明らかとなった(P<0.05).このことから,本種が生活史において樹木を利用する際,特にヤマモモを選択的に利用,すなわち選好性を示していることが示唆された.


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