| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-422 (Poster presentation)

階層ベイズモデルを用いたセアカゴケグモによる海浜性昆虫への捕食圧推定

*高木 俊(兵庫人博)

オーストラリア原産の毒グモとして知られるセアカゴケグモ(以下セアカ)は、1995年に大阪府で日本への侵入が初めて確認され、現在では日本各地に分布が拡大している。乾燥した環境を好み、日本では都市や港湾部の人工構造物を主な営巣場所としていることから、自然度の高い生態系への侵入や希少在来生物への影響についてはほとんど注目されてこなかった。発表者らの調査から、護岸部を有する海岸砂丘においてセアカの侵入が確認され、海浜性昆虫が多く捕獲されていることが明らかになった(Takagi et al. 2016)。生息地の分断化・孤立化が進行している海浜性昆虫に対して、セアカの捕食圧がどの程度であるかについては、海外での侵入事例を含めてほとんど評価されていない。そこで、セアカによる捕食が確認され、環境省レッドリスト準絶滅危惧であるオオヒョウタンゴミムシ(以下オオヒョウタン)を対象に、セアカによる捕食圧の推定を行った。

セアカが護岸部に定着した砂浜においてオオヒョウタンの標識調査を行い、標識個体(および未標識個体)が再捕もしくはセアカに捕食される頻度のデータを得た。セアカは捕獲後の生物遺骸を網に残す習性があるため、網周辺の残存物を調査することで、捕食の頻度および被食個体の標識の有無を調査可能である。標識再捕による個体数推定モデルに捕食を組み込んだモデルを用いて、オオヒョウタンの個体数およびセアカの捕食圧をベイズ推定した(JAGSを使用)。閉鎖個体群および開放個体群を想定したモデルにおいて、調査地におけるオオヒョウタンは比較的小さな個体群サイズ(50-120個体/0.25ha)であった。調査地の護岸部におけるセアカの密度はおよそ85個体/100mと高密度であり、調査期間を通じた全体の捕食圧は15-25%と推定された。


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