| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-425 (Poster presentation)
植物群落の反射率は,群落の構造と構成要素である葉や幹枝などの分光特性(分光反射率・透過率)により決定される。落葉樹林では展葉や落葉による葉面積指数(LAI)の変化が明瞭であることに加え,林冠木の個葉の分光特性も葉の成長と老化により変化する。そのため落葉樹林では,群落の反射率とそこから算出される植生指数は大きな季節変動を示す。また,日本の落葉樹林は,しばしば常緑植物であるササが林床に優占するという特徴がある。
高山サイト(岐阜県高山市)は,ミズナラとダケカンバが優占する冷温帯落葉広葉樹林であり,林床は常緑のシナノザサに覆われている。高山サイトでは,2003年から林冠の直上から分光放射計により林冠の反射率の連続観測を行っている。また,リタートラップとシュートの観察から,LAIの詳細な季節変動も測定されている。このサイトにおいて2005,2006年の展葉(5月下旬)から落葉(11月上旬)の様々な時期にミズナラとダケカンバの個葉の分光特性の測定を行った。また,地表面と幹の反射率,シナノザサの個葉の分光特性についても測定した。林冠木の個葉の分光特性の季節変動と林床のササがそれぞれ群落反射率に与える効果について検討するため,放射伝達モデルSAIL (Verhoef 1984) を,林冠の葉,幹枝,林床のササ群落といった群落構造を反映するように改変し,上記の観測データを用いて解析した。その結果,春から夏にかけての植生指数の変化は,展葉によるLAIの上昇だけでなく,成長による個葉の分光特性の変化の影響が大きいことが示された。また,林冠木が落葉する秋の終わりの植生指数には,ササのLAIが大きく影響していた。