| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-426 (Poster presentation)
宮城県北部に位置する伊豆沼は、最深部においても水深約 1.6 mほどの浅い湖沼で、最近10年でハス群落が拡大し、湖面の大部分を占めるようになってきた。また、夏から秋にかけて堆積物中のメタン濃度が高くなり、堆積物表層まで高濃度で存在することが報告されている(Yasuno et al. 2012)。ハス群落の拡大は、抽出葉による風攪拌の減少と水中光合成の低下や、枯死体による有機物供給の増加よって、水中の溶存酸素の低下と湖水中メタンの増大を引き起こすと考えられる。本研究では伊豆沼において、2013年5月から2015年5月まで冬期をのぞき毎月ハス群落内外において溶存酸素濃度の垂直分布を測定し、メタン濃度測定用の堆積物と湖水を層別に採集し、メタン濃度はヘッドスペース法で測定した 。夏から秋にかけて湖底付近の湖水中で貧酸素や無酸素になることがたびたび観察された。ハス群落内の溶存酸素濃度は、湖底から40 cmまでの層ではハス群落外のそれよりも有意に低かったが、湖底から70 cmの層から表層では差が見られなかった。水中のメタン濃度は、ハス群落内のほうがハス群落外よりも有意に高かった。水中の層別メタン濃度について、その層の水温、溶存酸素濃度、ひとつ下の層のメタン濃度、群落有無、ハスの葉の展開の有無を説明変数として一般化線型モデルでモデル選択をすると、表層をのぞいて〔水温+溶存酸素濃度+下層のメタン濃度〕のモデルが選択された。これらのことから、ハス群落内の湖水中では、下層の溶存酸素の低下、全層のメタン濃度の増加がみられ、これはハス群落内堆積物中で高濃度のメタンが湖水中まで拡散してるといえることを示している。