| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-427 (Poster presentation)

葉群フェノロジーの樹種特性が樹液流速度の季節変化に及ぼす影響

*斎藤琢(岐阜大)・Otieno Dennis(バイロイト大)・梅林利弘(北海道大)・野田響(国環研)・Jung Eunyoung(バイロイト大)・村岡裕由(岐阜大)・Tenhunen John(バイロイト大)・永井信(JAMSTEC)

本研究では,落葉広葉樹林における葉群フェノロジーと樹液流速の季節的な関係性を解明することを目的とした。そのために,岐阜県高山市の落葉広葉樹林(AsiaFlux TKY)において,カメラによる展葉・黄葉・落葉状況の観測・シュートフェノロジー(SPAD,葉数)計測・グラニエセンサーによる樹液流観測をおこない,ミズナラ・ダケカンバの落葉フェノロジーと樹液流速の季節変化の対応関係を調査した。その結果,(1)ダケカンバの秋季の樹液流速は,ミズナラのそれと比較して、季節的に早く減衰する傾向があること,(2)このミズナラ・ダケカンバの秋季の樹液流速の減衰の相違性は,両樹種の葉群フェノロジーの相違性と良い対応関係があることが明らかになった。また本研究により,デジタルカメラ-樹液流複合観測は,樹種毎の葉群フェノロジーと植生機能の関係性の解明に有効な研究手法であることも示された。以上の知見から,常緑針葉樹林と比較して種多様性が高い落葉広葉樹林における生態系機能をより深く理解するためには,(1)光合成や蒸散を司る葉群の量的(葉量)・質的(例えば,光合成能,気孔開閉)な特性とそれらのフェノロジーを生態系機能の動的メカニズムとして樹種毎に把握することと,(2)群落を構成する樹種間の環境応答特性の相違性・特異性および植生遷移に伴う優占種や植生サイズの変化が,生態系機能の環境応答特性や長期的変化に及ぼす影響を解明することが必要だと考えられる。


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