| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-429 (Poster presentation)
近年、森林が持つ温暖化緩和機能が注目され、CO2吸収源としての森林の機能解明が求められている。森林の土壌炭素蓄積量は膨大で、森林内の炭素動態へ大きな影響を与え得る。ゆえに土壌由来CO2動態の解明が不可欠であり、各地でその観測が行われている。本研究では、冷温帯落葉広葉樹林における融雪末期から夏季に移行する期間の土壌CO2動態を解明するため、岩手県八幡平市安比高原ブナ林にて土壌CO2濃度の鉛直分布と土壌CO2フラックスを経時観測し、両者の関係を検討した。土壌CO2濃度は0、5、10、30、50、75、100cm深に小型土壌CO2赤外線センサー(Yasuda et al. 2008)を設置し、土壌CO2フラックスは土壌呼吸連続観測装置(溝口ら 2003)を設置し密閉チャンバー法に準じて、それぞれ一時間ごとに観測した。土壌CO2濃度の鉛直分布は土壌深が深くなると増加し、75cm深で最大となり、100cm深では減少した。また、土壌CO2濃度は融雪直後には低い傾向を示し、林床面で700~800ppm、75cm深で10000ppm程度であったが、梅雨明け後7月初旬から徐々に上昇し、林床面で2800ppm程度、75、100cm深では18000~19000ppmに増加した。土壌CO2濃度の変化は概ね地温で説明できた。土壌CO2フラックスは土壌CO2濃度と有意な相関が認められた。土壌CO2フラックスとCO2濃度の相関性は落葉層では極めて高かった(R2=0.84)が、鉱質土層では低かった(R2=0.35~0.51)。これは土壌深部のCO2は鉱質土層そのものが拡散抵抗となり土壌CO2フラックスに対して俊敏な応答を示しにくいため、また土壌CO2フラックスは土壌中CO2濃度だけでなく風速や大気中CO2濃度など外的環境に影響されるためと考えられた。