| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-431 (Poster presentation)
降水量操作下における植物多様性-分解の関係性
岡田慶一(横浜国大・環境情報), 藤井佐織(アムステルダム自由大), 森章(横浜国大・環境情報)
生物多様性によって維持される生態系機能の安定性について、これまで多くの研究がなされてきた。近年では、様々な生態系機能を同時に考慮すると、その機能的安定性は低下することが示唆されている。このような多機能性を考慮した場合、将来の気候変動に対して生態系が果たしてどの程度頑健なのかが危惧されており、気象変化が生態系の多機能的安定性に及ぼす影響を詳細に理解する必要がある。これまで、陸域生態系では生産性(炭素固定機能)と植物多様性との関係を中心に研究されてきたが、多機能的安定性に関する十分な知見は蓄積されていない。本研究では、降水量を操作した自然草原群落において、植物多様性と生産性やリター分解機能などの多機能的安定性との関係を解析する。本発表では、経年計画のうちの初年度における植物多様性と分解機能の関係性を解析した。
調査はステップ気候(年平均降水量334 mm)に位置する中国・内モンゴル自治区シリンゴル盟の草原に設置された降雨量操作試験区で行った。年降水量を年間500㎜から100㎜まで段階的に調整した自然草本群落区において、tea-bag index (Keuskamp et al. 2013) に基づく分解試験から初期分解速度(k)と炭素貯留潜在性 (S)を求めるとともに,各試験区の群集構造との関係を解析した。
降水量の低下に伴ってkは減少したがSでは相関関係が見られなかった。一方、植生の地上部生産量、被度および種多様性は減少した。本発表では、降水量低下に伴う、植物多様性と分解機能の関係性の変化に関する解析結果を紹介し、干ばつが植物多様性を介して分解機能に及ぼす影響を考察する。