| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-435 (Poster presentation)
国内有数の漁獲量を誇る霞ヶ浦の一部である北浦において水銀の挙動を明らかにすることは,世界規模での進行が懸念される水銀汚染が北浦生態系,さらには流域住民の健康に及ぼす影響を考える上で重要である.そこで本研究では,北浦生態系における水銀の濃度分布を明らかにすることを目的として,北浦の湖水および生物中の水銀(総水銀,メチル水銀)分析を行った.まず,湖水中の総水銀およびメチル水銀濃度を調べるために,2015年7月に北浦湖心(水深6.6m),湖北(水深4.7m),湖南(水深2.9m)の3地点と北浦北部の流入河川下流域2地点および流出河川1地点で採水を行った.湖内3地点では深度別に表層,中層,湖底直上の3層で採水を行った.その結果,3地点の表層における総水銀濃度は湖心(0.28 ng/L)が一番高く,湖北(0.19 ng/L)と湖南(0.18 ng/L)では大きな違いは見られなかった.湖水中のメチル水銀濃度はほとんどの地点で検出下限値(0.0004 ng/L)だったため,評価はできなかった.一方,流入河川中の総水銀濃度(0.38~0.59 ng/L)は北浦湖水に比べておよそ2~3倍高く,かつメチル水銀を検出することができた(約0.02 ng/L).この結果,北浦湖内への水銀の供給源として,流入河川が一定の役割を果たしている可能性が示唆された.次いで,北浦で採取されたチャネルキャットフィッシュの総水銀分析を行った.その結果,この魚における総水銀濃度は11~118 ng/g湿となり,湖水に比べて5万~55万倍も高くなっていた.また,この分析結果はどれも日本の魚介類の水銀暫定的規制値(総水銀:400 ng/g)よりも低い値であることも分かった.以上のように,本研究により北浦生態系における水銀濃度分布の一端が明らかになった.