| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-455 (Poster presentation)
マングローブ林は単位面積あたりにすると森林生態系最大の炭素プールであり、蓄積している炭素の多くが土壌有機態炭素(SOC)として存在している。これまでのマングローブ林におけるSOC蓄積量やそれらの動態に関する研究の多くは、主に熱帯に分布するマングローブ林の地下部が対象とされてきた。一方、日本の南西諸島を含めた亜熱帯に分布するマングローブ林では、SOCの蓄積量や起源、動態などに関するデータが比較的少なく、その詳細は未だ不明な点が多い。本研究では、亜熱帯に属する沖縄県石垣島の吹通川河口マングローブ林を対象に、SOC蓄積量とそれらの起源について推定することを目的とした。
堆積泥の採取地点は、一つの支流約200mに沿った6地点とした。堆積泥の採取はソイルオーガー(W10mm × L300mm × H10mm)を用い採取可能な深さまで10cmごとに採取した。各試料の仮比重およびSOC(%)からSOC蓄積量を算出した。同じ試料を用い、安定炭素同位体比(δ13C)を測定し、SOCの起源を推定した。
本調査地におけるSOC蓄積量は29.1 ± 21.2 kg C m-2(平均値±標準偏差)であり、熱帯〜寒帯に分布する一般的な森林と比べると、2〜5倍程度であることが明らかとなり、重要な炭素蓄積の場であることが示された。また、インド洋沿岸を中心とした熱帯地域のSOC蓄積量データと比較すると、平均値の1/2程度であった。亜熱帯に分布する他のマングローブ林のSOC蓄積量と比較した場合では、平均値と同程度であった。安定炭素同位体比(δ13C)から推定したSOCの起源は、そのほとんどがマングローブ林であることが示唆された。ただし、δ13C値が同程度である土壌粒子や植物リター等の周辺外部インパクトの定量的評価が今後の課題でもある。