| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-457 (Poster presentation)

N2O発生と発生機構の短期的時間変化:発生源としての作物残渣の重要性

*山本昭範(東京学芸大),秋山博子,中島泰弘,星野(高田)裕子(農環研)

農耕地では、作物収穫後に生じる残渣が重要なN2O発生源となっている可能性が指摘されている。作物残渣のすき込み後に観測されるN2O発生は、残渣に含まれる炭素や窒素がN2O生成の基質としてN2O生成に関与する様々な微生物に利用されていると考えられるが、その詳しい生成プロセスは明らかでない。特に、短期的な時間スケールにおけるN2O発生と生成プロセスの変化や、その関係は解明されていない。本研究はN2O同位体レーザー分光計と自動開閉チャンバーから構成される測定システムを用いて、じゃがいも畑における施肥後および残渣発生後のN2O発生とN2Oアイソトポマー比を測定し、生成プロセス変化を解析した。

その結果、残渣発生後に大きなN2O発生が観測され、作物収穫後に生じる残渣がじゃがいも畑における重要なN2O発生源となっていると考えられた。また、アイソトポマー比は施肥後、残渣発生後の各期間で異なる時間変化を示した。施肥後では、N2O発生のピーク期間とそれ以外の期間でアイソトポマー比の変動パターンに大きな違いは見られなかった。一方、残渣発生後では、N2O発生のピーク期間とそれ以外の期間でアイソトポマー比の変動パターンが明らかに異なった。N2O発生に対する各N2O生成プロセス(硝化、微生物脱窒、カビ脱窒)の寄与を解析した結果、施肥後のN2O発生の変化には主に硝化や微生物脱窒の変化が関係していると考えられた。これに対して残渣発生後N2O発生の変化には、特に微生物脱窒やカビ脱窒の変化がN2O発生のピークと関係していると考えられた。これらの結果から、残渣発生後の期間においては、N2O発生に加えてN2O生成プロセスも短期的な時間スケールで変化しており、各生成プロセスの変化が施肥後や残渣発生後におけるN2Oの発生量や変化パターンに影響していることが示唆された。


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