| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-463 (Poster presentation)
本研究は,土壌水分条件が植物の利用窒素形態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,滋賀県大津市にある京都大学桐生水文試験地の土壌水分条件の異なる3地点において,ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)の葉有機物中の全窒素,土壌中の全窒素(深度0,10,20,30cm),イオン交換樹脂膜(PRS Probe,Western Ag社)に吸着させた土壌水中のNH4+とNO3-(深度0,10,20,30cm)の濃度および窒素安定同位体比(δ15N)を2014年10-12月(冬季)と2015年7-9月(夏季)の2期間について測定した.また,土壌水を約28日ごとに採取し,NO3-のδ15Nを測定した(角,未発表).その結果,NH4+のδ15N(夏季のみのデータ)が最も高く,次いで土壌中全窒素のδ15N,NO3-のδ15N,葉有機物中の全窒素のδ15Nの順に低くなっていた.夏季ではNO3-のδ15NがNH4+のδ15Nよりも低く,冬季ではNO3-のδ15Nが土壌中全窒素のδ15Nよりも低いことから,いずれの地点でも土壌中で硝化によりNO3-が生成されていることがわかった.また,冬季と夏季の葉有機物中の全窒素のδ15Nは,土壌中の窒素プールの中でも最も値が低い夏季あるいは展葉期(5-7月)のNO3-のδ15Nと近い値であった.これらのことから,ヒノキの葉の窒素源は主に展葉期あるいは夏季に吸収したNO3-であると考えられた.