| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-470 (Poster presentation)
霧が頻発する海岸付近や山岳地帯では、霧が樹木に付着して大きな水滴となり林床へと落下する「霧水沈着」が森林の水・物質循環に影響を与える。特に、林縁部ではスポット的に高い霧水沈着量が観測されるが、同一森林内での霧水沈着量の空間的なばらつきを定量的に評価した例は少ない。本研究では、霧水沈着の空間分布を把握するために、2015年9月から兵庫県六甲山地のスギ林内の12地点(主に林縁部)で林内雨量の測定を行った。得られた林内雨量から降水量(林外雨)を差し引くことによって、霧水沈着量を計算した。その結果、林縁木の林床には、わずか6時間の間に降雨と霧水沈着によって30 mmもの水が供給されたことがわかった。また、2015年9月から10月の同地点での積算霧水沈着量は、降水量の7割に達した。霧に含まれる物質濃度は成分によっては雨よりも高いため、霧水による物質沈着量は降雨による物質沈着量を上回る可能性もある。霧水沈着が森林生態系の物質循環にどのような影響を及ぼしているかを解明するためには、より多くのデータを蓄積し、山地森林での林内雨量のばらつきを定量化する必要がある。